ぱすたけ日記

日記っぽいのを書きます。

佐村河内守氏を撮ったドキュメンタリー映画『FAKE』を観た。

ちょっと前に世の中の話題を大いにかっさらった騒動の渦中の佐村河内守氏とその妻である香さんを撮影した、森達也監督作品『FAKE』観てきた。

http://www.fakemovie.jp/

この前の三連休の締めくくりとして観に行った。

以下、ネタバレを含みます。

作中のメインの登場人物は佐村河内守氏とその妻佐村河内香氏。この2人と森監督のやり取りや来訪するテレビ関係者や佐村河内守氏の両親と佐村河内夫妻のやり取りなどがメインに構成されている。

まぁ色々な意見があるとは思うが、とにかく観終わったすぐの感想としては「誰も彼も本当のこと、嘘のことを言っているのか全然分からない。それを佐村河内守氏、新垣隆氏、神山典士氏、フジテレビの番組関係者、森達也監督、誰もがふざけてなくて、かつ本気でその光景を生み出していることが本当に滑稽で可笑しくてたまらない。」という感じだった。

新垣隆氏はテレビのバラエティ番組などに出演し、大久保佳代子に壁ドンしたり、ゴールデンボンバーと共演したりしている映像を佐村河内守氏がそれをテレビで観るという形で複数回画面に登場する。フジテレビ関係者がその新垣隆氏が出演したバラエティ番組へのオファーで佐村河内守氏を尋ねた時に、佐村河内守氏が新垣隆氏がモデルをしている雑誌を出してきたときには流石に笑ってしまった。

佐村河内守氏は新垣隆氏のことそんなに恨んでなくて、もうただのファンなんじゃないかと思うくらい、彼が出演するテレビ番組をオンタイムでチェックし、オンタイムで観れなかったFNS歌謡祭はYouTubeで観ていたし、モデルをしている雑誌もきっと彼が買ったのだろう。熱意がすごすぎる。

この作品では佐村河内守氏の胸中や思いなどが大部分を占めているので、彼に感情移入すると思いきや、何故か間々でネコが写り込んでそっちに意識が奪われる。何故かネコの異常なズームカットが数回登場する。可愛い。

佐村河内守が口を開けて頬を叩いて音を出して演奏して魅せるシーンがあってめちゃくちゃシュールな光景で笑ってしまった。

佐村河内夫妻の食事のシーン、香さんの作ったハンバーグに手を付けずに黙々と佐村河内守氏が豆乳を飲んでて、しかも2杯も3杯も飲んでて、「彼は豆乳が好きなんです」「豆乳好きで全部飲んでお腹いっぱいになる」とか言ってて意味不明でスゴかった。多分、他のシーンで嘘をついていても、このシーンの豆乳がとにかく好きというのだけは信じられると思った。

佐村河内守氏が出演を辞退し、新垣隆氏が出演したバラエティ番組を観た後に、結局自身を馬鹿にされたじゃないかと言っている佐村河内守氏に森達也監督は「テレビマンは出演者を使って最大限にどう面白くするかということしか考えてないから、新垣隆氏が出演し佐村河内さんが出なかったからこうなっただけで、佐村河内さんが出ていたら変わったんじゃないですかね」(要約)というようなことを言っていた。あと、「佐村河内さんは僕のことを信用してくれているかもしれないけど、僕が嘘をついたり騙している可能性もありますよね」と森達也監督が言ってて、スゴいメタっぽいなぁと思った。森達也監督はこの作品を通じてあくまで佐村河内守氏とその騒動の真実を伝えたわけではないし、彼が良いようにあらゆる編集を、それこそバラエティ同様に行い、印象を操作している可能性だって十分にあるわけだし。

佐村河内守氏が嘘をついていると『FAKE』作中描写に合わせて指摘をしている人がいっぱいいるので、そういうこともあるのだと思う。興味がある人はググッて読んでください。まとまってて読みやすかったやつ1つだけリンクしておきます。

森達也監督も最後意味分からなくなったのか、佐村河内守氏に急に音楽を作れと言い始めて、そしてシンセでの作曲中の様子は夫妻に撮影させて、その完成した曲を10分近くにわたって流したりしてた。このシーン不思議だったのは、それまでのシーンで執拗に提示していた新垣隆氏へのいわゆる『指示書』には、世界観を文字でビシっと書いたり、曲の構成などを数枚にわたってしたためていたのに、いざシンセで作っている場面では電源を入れ説明書を読みいきなり作り始めてたし、その前後でも悩んでるシーンとか世界観について紙にまとめたり語ってるシーンとかも一切なかった。

最後に森達也監督が佐村河内守氏に「僕に嘘をついてることはないですか?」と尋ね、氏が無言のままの映像が10秒ほど流れ作品は終わった。この作品中で語られたこと、何が嘘で何が本当かはさっぱり分からなかった。そういう曖昧な中で出来事があって人々が居て、なんかタイミングよく騒いだりするとか佐村河内守騒動みたいになる反面、何故か新垣隆氏みたいに急に人気者みたいになる人もいて、それでなんとなく上手くいく人とか貶められる人とか、騙しきる人とか居て、なんかもう意味がわからないけど、そういう可笑しさ不安定さ不確かさみたいなのをなぞってるって意味では面白かったんじゃないかなと思った。

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